【インド新規事業立ち上げ物語】(第143話)インドの森林カーボンプロジェクト:課題と展望


※ CEOブログの一環としてGozioki代表の吉田が執筆
※ 現在Goziokiでは「サステナビリティ教育・支援プラットフォーム」である”SALSH”の立ち上げ準備を進めている
※ ”SALSH”を通じて、日本企業の『サステナビリティ経営』やCSR活動を後押しすることを意図している
※ インド現地での動きについては出張の総括動画をご参照

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前回投稿では、インドがCOP28で発表した「グリーンクレジットイニシアティブ(GCI)」を紹介した。GCI取り組みはカーボンシンク(二酸化炭素吸収源)の中でも「水資源と植林」にその中身を絞ったものである。ただ実際のところは進めるに当たってのハードルもある。今回の投稿では、森林カーボン市場に関連するインド固有の課題について見ていきたい。

1.地域コミュニティとの関係

インドでは、多くの森林地域が先住民や地域コミュニティによって伝統的に管理されている。これらのコミュニティは、森林資源に大きく依存しており、森林カーボンプロジェクトがコミュニティの土地利用権や生活基盤に影響を及ぼすことがある。地域コミュニティの参加と支持を得るためには、プロジェクトの計画と実施において関係者の権利と利益を尊重する必要がある。

2.土地所有権と利用権の複雑性

ただインドでは、その土地所有権と利用権の問題が複雑で、しばしば不明確である。森林地域における土地の所有権や利用権が明確に定義されていない場合、森林カーボンプロジェクトの実施に際して紛争が生じる可能性がある。そのあたりをしっかり紐解く作業も生じることになる。

3.資源へのアクセスと管理

インドの森林資源は、過剰伐採、土地利用の変化、および森林破壊によって圧迫されている。これらの圧力は、カーボンシンクとしての森林の能力を弱め、森林カーボンプロジェクトの潜在的な効果を制限する。効果的な森林管理と保護が、カーボンシンクとしての森林の持続可能性を確保するために必要となってくる。

4.政策と規制の枠組み

インドには、森林保護と管理を強化する多くの政策と法律があるが、これらの実施には課題が伴う。森林カーボン市場を効果的に機能させるためには、カーボンクレジットのモニタリング・報告・取引に関する明確で一貫した政策と規制の枠組みが必須である。

5.技術と能力の構築

インドにおける森林カーボンプロジェクトの計画・実施・監視には、専門的な知識と技術が求められる。適切な技術や専門知識を持つ人材を見つけられないプロジェクトにおいては、品質と成果に影響が出てくる。

このような状況から分かる通り、これらの課題に対処するにはインド政府、非政府組織、地域コミュニティ、民間セクターの協力・連携が必要になってくる。持続可能な森林管理、地域コミュニティの権利と利益の保護など、共同で取り組むべき重要な領域がある。政府が掲げるイニシアティブは綺麗で美しいが、現場の状況も直視してあげることは、最適なアプローチを選択する上でのヒントになる。

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