【インド新規事業立ち上げ物語】(第38話)単純構造では語れない国(MIRAI LAB PALETTE)


※CEOブログの一環としてGozioki代表の吉田が執筆しています。

Goziokiは「サステナビリティ教育・支援プラットフォーム」である”SALSH”の立ち上げ準備を進め、支援先としてインドを選定しているが、インドに対する知見を深める目的で昨日(2023年10月26 日)、以下のイベントに参加させてもらった。

【PALETTE x 住友商事グローバルリサーチ コラボ企画】SC Kaleidoscope#13 「「モテキ」のインド、その実際に迫る」
https://www.mirailabpalette.jp/event-details/20231012

そこで、次のような話を聞くことができた。

1.なぜモテキ

世界の中でのインドの注目が高まっている。昔からインドは「ブーム」のような形で注目を集めることはあっても、それが長続きはしなかった。但し、モディ政権以降は、より積極的な外交を推し進めたことで、「中長期でビジネス関係を構築できる国である」と世界に対して印象付けることに成功した。また、米中間の緊張感が高まる中で、インドの立ち位置がより重視されるという国際環境の要因も影響している。ただインド自体は、アメリカと中国のどちらの側につくということではなく、両国を「伍していく相手」と捉えている。

2.全方位外交

インドは、時には「八方美人」とも言われてしまう全方位外交の方針を取っている。「Quad(Quadrilateral Security Dialogue、日米豪印戦略対話クアッド)」および「I2U2 Group(インド、米国、イスラエル、アラブ首長国連邦からなる新クアッド)」のメンバーであり、またロシア製兵器の購入国であることも知られている。モディ政権は全方位外交を強化していて、最近のパレスチナ・イスラエル戦争でインドがイスラエル支持を表明していることもその現れである(グローバルサウスのリーダーとして中立的な立場を取ることもあったことから考えると、これは珍しい動き。全方位外交の強化が伺える)。

3.外資から見たインド

外資企業がインドで事業を展開する際には、多くのハードルが存在する。インドは民主主義国家ではあるが、半植民地感情を抱えた国でもあるので、「西側諸国と同じ」と思ってはならない。また、まだまだインフラ不足、現地企業との価格競争に巻き込まれた場合はなかなか勝ち目がない、「タックステロ」とも言われるインド政府による強引な課税、これらを考えると成功するのは簡単なことではない。このような複雑さから、単純なマクロ経済学のフレームワークでインドを理解するのは難しい。

4.シーク教徒殺害事件(本編終了後の個別Q&Aより)

モディ首相は「ヒンズー教徒至上主義」と言われるが、インドは国民の大多数がヒンズー教徒なので、モディ政権の基盤維持という観点では「ヒンズー教徒至上主義」は問題にはならない。またモディ首相は”One India”と主張していて、自ら他民族排除を打ち出している訳ではない(あくまでも周りがモディの政策を「ヒンズー教徒至上主義」「他民族排除」と評価しているもの)。少し前にカナダの空港でシーク教徒が殺害され、インド政府の関与や「ヒンズー教徒至上主義」が話題になった。但し殺害された人物はシーク教徒の中で特に支持されていた訳ではなく、インド国内での活動が難しくカナダで活動を行っていた経緯もある。つまり、こういった出来事も「ヒンズー教徒至上主義によるもの」と単純化して理解してしまうと、本質を見逃してしまう。

+++++

今回のイベントを通しての私の大きな学びは、「インドを単純な構造で語るのは困難」ということ。国として大き過ぎて、複雑過ぎて、一概には言えない部分だらけなのである。これからも広い視野に基づき、正しい情報を捉え、インドを見ていければと思う。

#インド #India #新規事業 #新規事業立ち上げ #インド新規事業立ち上げ物語 #第38話 #ベンチャー #ベンチャー経営 #ビジネス #business #Gozioki #環境問題 #環境教育 #サステナビリティ #sustainability #サステナビリティ経営 #サステナビリティ教育 #教育 #education #資金調達 #SALSH

<過去記事>
【インド新規事業立ち上げ物語】(第30話)改めて「Why India?」を考える
【インド新規事業立ち上げ物語】(第28話)「サステナビリティ取り組み」に関わる日本企業のニーズ
【インド新規事業立ち上げ物語】(第26話)インドのCSR概念を変えた日本人