【CEOブログ】グローバル化2.0に向けて

1. 「日本にとっての」グローバル化

一言で「グローバル化」といっても、どこの国の目線に立って考えるかによって、その意味合いは異なるように思います。今の時点で既に国際社会で多大な影響力を持っている国もあれば、今の時点では国際社会と多くの接点を持てずにいる国もあります。また国としてどのような存在を目指しているのか、方向性の違いもあります。例えばイタリアは、世界中で認知されていて大きな存在感を発揮している国ですが、「世界経済を自分たちで牽引しなければならない」とは自分たちで考えていないかもしれません。一方で、アメリカや中国は異なる考えを持っているかもしれませんし、またロシアはそれらとは更に異なるアプローチを検討しているかもしれません。イタリアを例に出しましたが、同じヨーロッパの中でも、イギリス、ドイツ、フランスなど、それぞれどのように自分たちの立ち位置を固めようとしているのかは様々であります。

以上のように、「現時点でどこまで国際社会と接点を持てているのか」、また「最終的に国際社会の中での立ち位置として目指すところはどこにあるのか」、これらが異なるが故に「グローバル化」と一言でいっても、どこの国の目線に立って考えるのかによって意味が変わってきます。今日ここで見ていくのは、「日本にとっての」グローバル化の話になります。

2. グローバル化1.0

私が改めて言うまでもないことですが、日本は戦後、高度な経済成長を遂げ、アメリカに次ぐ世界第2位の経済大国にまで上り詰めます(現在は中国に抜かれ3位)。日本は国力を高め、積極的に海外に飛び出していき、そして海外で認められる存在になっていきました。もちろん、日本人にとって海外に飛び出すのは簡単なことではありません。日本と海外では「言語」と「文化」が異なるからであります。ただし、海外でのチャンレンジを継続的に行った人たちが居たからこそ、現在の日本では「グローバル化1.0」は概ね達成されていると言えるのではないでしょうか。

グローバル化1.0とは、『日本人が、言語と文化の壁を乗り越えて、世界に飛び出て活躍する』ことであります。

3. グローバル化2.0

現在の日本は、新たな局面を迎えていると言えるでしょう。国内での人材不足、またそれに伴う海外からの人材受け入れが叫ばれる中で、日本人は国内に於いて外国人とうまく共存していく術を身につける必要があります。これは簡単なことではありません。なぜならば、日本人と外国人では「言語」と「文化」が異なるからであります。

グローバル化1.0の世界では、海外に飛び出していく人たちだけが国際感覚を持ち合わせていれば良かったのですが、グローバル化2.0の世界では日本に居る多くの日本人に対して、時代に合った新たな生き方が求められていきます。

グローバル化2.0とは、『日本人が、言語と文化の違いを受け入れて、日本国内で外国人と共存していく』ことであります。

4. グローバル化2.0の難しさ

<多様性に慣れていない国>
冒頭でも触れた通り、ここで言うグローバル化2.0は「日本にとっての」話になります。日本人にとっては、言語と文化の違いを受け入れて日本国内で多くの外国人と共存していくことは容易なことではありません。しかし、例えば多様性の国であるアメリカではそれは難しいことではありません。様々な価値観が混在するのが当たり前と捉えられていて、人々は異なる考え方と共に生きることに慣れています。アメリカ以外でも、移民を多く受け入れている国や、元々多民族国家である国であれば、国民は自然と臨機応変さを身に付けています。

<なぜ日本人が寄せていかないといけないのか>
ここまでの話で、少し違和感を覚える人も居るかもしれません。

・グローバル化1.0の世界で、日本人が海外で言語・文化の壁を乗り越えていかないといけないのは理解できる

・でも、グローバル化2.0は日本国内で起きていることなので、なぜ日本人が言語・文化の壁を乗り越えていかないといけないのか

・グローバル化1.0の逆の考え方をグローバル化2.0に適用すると、日本に来る外国人が頑張って日本の言語・文化に適応してもらうのがあるべき姿なのではないか

上の意見はもっともで、日本に来る外国人には日本の言語・文化を習得してもらった上で来てもらうのが理想的な形になります。ただし、理想と現実をある程度分けて考える必要もあります。外国から日本に来る人の中には、初めて日本に来る人も多いですし、そういう人たちにいきなり日本の言語・文化を完全に習得していてもらうことを期待するのは難しいです。「現実的対応」としては、(日本人と外国人の)両者歩み寄りが必要で、日本人にも外国人の考えを理解するための努力が求められることになります。

あとはもう少し冷静に日本の現状を捕まえると、「人材が不足している」厳しい状況があります。外国人を受け入れていかないと、日本経済は立ち行かなくなってしまいます。その中で、我々には「日本語が不充分、日本文化への理解が不充分」と外国人に対して言っているような余裕はもうありません。我々の方が、「外国人材とも共存できる」意味での真のグローバル人材にレベルアップすることで、状況に適応していくことになります。

最初のうちは大変かもしれませんし、「なぜこちらが外国から来ている人に寄せていかないといけないのか」違和感はいつまでも付きまとうかもしれません。長期的な視点で考え、「多様性」が日本国内でも当たり前のものとなったとき、我々は自然に異なる文化を受け入れられるようになっているでしょうし、そのときには日本がまた「グローバル化」を一歩推し進めたと言えるのでしょう。

<タイ国の事例>
最後に日本から少し離れますが、「タイにとってのグローバル化」は「日本にとってのグローバル化2.0」に似ているように思います。経済成長著しい東南アジアに於いて、タイは抜きん出た存在であります。人材不足に陥っており、近隣のカンボジアやミャンマーといった国々から人が毎日移動しています。カンボジア人やミャンマー人がタイに行くことは、日本に行くことと比べれば言語・文化の両面でハードルが低いですが、少なからず障壁はあります。今、タイ人にもっとも求められていることは「異なる価値観と共存する術を身につける」意味でのグローバル化であり、タイ国内では英語教育の重要性を改めて見直すような動きもあります。