【CEOブログ】シンガポールになれなかったマレーシア


※あまりの美味しさに、2日連続で訪れたマレーシアバクテーのお店にて。写真は2日目に食したバクテーラーメン(通常バクテーはライスと食す)。

1.経緯

シンガポールは元々マレーシア連邦から追い出される形で独立した国家であることを考えると、『マレーシアになれなかったシンガポール』とするのであればともかくとして、『シンガポールになれなかったマレーシア』というタイトルには少し違和感を覚えるかもしれない。ただ今回の投稿では敢えて、『シンガポールになれなかったマレーシア』を見ていきたい。

マレー系、華僑系、インド系が集まるマレーシア連邦(当時)において、ビジネス的な成功の中心にいた華僑系に対して、多数を占めるマレー系の反感が強まっていった。マレーシア連邦がマレー系に対する優遇政策を強化していく過程で、追い出される形になった華僑系が成したのが現在のシンガポールである。

ただ、その後のシンガポールの目覚ましい成長は誰もが知るところ。アジアの金融中心地として、資源を持たない国家であるのにも関わらず、世界中のグローバル大手がアジア本社を構える場所として栄えていった。そしてその立役者はもちろんリー・クアンユー。

2.その後
【筆者注】マレーシアの経済成長にはさまざまな要因が関わっていることは言うまでもないが、本投稿では、特に華僑系が果たしてきた役割に焦点を当てていく。華僑系のビジネス的成功がマレーシア経済に与えた影響は無視できないものの、あくまで全体の一側面として、ご理解いただければ幸いである。

ではシンガポールを追い出したマレーシアはどうなったのか。マレーシアもASEANの雄として経済成長を着実に遂げていく。それでも現時点での数字を見ると、次のようになっている。

[シンガポール] 人口:600万人 GDP:4,600億ドル
[マレーシア] 人口:3,300万人 GDP:4,000億ドル

マレーシアも成長していない訳ではないが、シンガポールほどではない。マレーシアが抱える課題はどこにあるのか。

• マレーシア連邦でビジネス的な成功を収めていたが故に、追い出された華僑系
• その華僑系が作った国であるシンガポールがマレーシアをGDPで上回っている現状
• 現在もマレーシアでビジネスの中心にいるのは華僑系であるものの、優遇されるのはマレー系という実態
• 優秀な華僑系が次々とマレーシアを離れていっているという事実

マレーシアは、マレー系を優遇するだけでなく、華僑系がもたらす成長をうまく取り込めれば、もっと成長できたかもしれない。ただそれももちろん「たられば」である。マレー系は、マレーシアにおける最大勢力。マレー系の人たちが納得してこそ、国家として存続できることも認識しておきたい。

3.今後

華僑系の力を活かせなかったという意味で、『シンガポールになれなかったマレーシア』なのであるが、華僑系を取り込まなかったことが誤りであると言うつもりはない。ただシンプルに、マレーシアを離れる華僑系が増えるのは、残念なことのように思う。

マレーシア人に言わせると、「クアラルンプール(首都)市内の景色はここ数十年変わっていない」とのこと。「30年前の時点で、今の裕福さは既に手に入れていた。そこから今日に至るまで、何かが大きく変わったかと言えば、そのような実感はない」とマレーシア人は続ける。

マレーシアはASEANの中で一定の影響力を持ち続けることには変わりはない、と個人的には信じたいが、マレー系と華僑系は最終的にはどのような着地点を見出していくのか。

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