【CEOブログ】なぜソフトバンクとトヨタの株主総会は退屈しないのか


[2022年6月23日掲載]

この季節がやってきました。日本の企業は3月決算であることが多いですが、決算発表を追えこの時期になると、毎年大企業の株主総会の様子がニュースなどで取り上げられます。

今この投稿を読んでくださっているみなさんも、株取引を行っていたら、自分が株を持つ会社の株主総会に招待されているのではないでしょうか。あるいは株取引を行っていなかったとしても、株主総会の様子はネット上で公開されることも増えてきていますので、そのような形で株主総会を見るのを楽しみにしている方もいらっしゃるかもしれません。

1.変わりつつある株主総会

株主総会は、会場で直接参加する方法と、オンラインで視聴・参加する方法と2つあります。そして言うまでもないことですが、2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大したことに伴い、オンラインへの移行は急激に進みました。2020年、2021年にはオンライン開催のみに絞った会社も少なくありませんでした。

2022年になり、会場でのリアル開催に流れは多少戻ってきています。大企業の場合、「会場での開催」と「オンライン配信」を併用するケースが多いかと思います。ただ会場でのリアル参加の人数は、到底コロナ前の水準には及ばず、広い会場に(しかも大企業の場合は有名ホテルなどお金がかかる場所での開催も多い中)少ない人数しか集まらないような光景は、もうしばらく見続けることになりそうです。

株主総会と言えば、株主からの質疑が1つの目玉でありますが、質疑の方法も多様化しています。2022年6月現在で言うと、主流は次の3つの方法でしょうか。①事前にホームページなどオンライン上で投げかける質問、②当日会場で挙手をして投げかける質問、③当日オンライン配信を見ながらチャット機能などを用いて投げかける質問。

この内、①③はオンラインで投げかける質問であるが故に、質問をすること自体のハードルが下がり、それに伴い質問のクオリティーも下がる傾向にあります。その一方、②は大会場で挙手をする勇気も求められますし、オンラインでなされる質問との比較で言えば、極端に変な質問はないと言えるでしょう。またオンラインではなく会場側の運営として、②については「どんなにたくさん質問が来たとして、最後の一問までしっかり回答したい」のか、「ある時間が来たら切り上げる」のか、企業側のスタンスが明確に分かれるところであります。無論、前者の方が株主からの印象は良いです。

そう考えると、コロナ禍で物事はどんどんオンラインに移行しながらも、②のようなものも(株主からすると)企業の別の一面を見極めるのには有効だったりするのです。

2.株主総会あるある

これは「あるある」とは少し違うかもしれませんが、そしてある程度は昔からそうなのかもしれませんが、株主総会に会場でリアルで参加する人たちの高齢化がすごいことになっています。日本の国自体が高齢化していることに加え、引退していない世代(=相対的に忙しい)は株主総会には参加しない、もしくは参加してもオンラインで、となります。その結果、例えば東証一部上場しているような会社の株主総会の会場に来ている人たちの平均年齢は60-70代ぐらいなのではないでしょうか。この数字は私のイメージであって、正確に調べた訳ではありませんが、偏った年代層であることには違いはないかと思います。

そして株主総会の(リアルでの)参加者の平均年齢の高さは、次に述べる「あるある」と大いに関係しています。

【株主からの質問あるある】
● 「一人質問は1つまで」のルールで運用される株主総会が多い中、質問を2-3個する人がいる
● 結局言いたいことは「配当額を上げて」
● 「私は以前にこういうことをしていた」「他社の株主総会でも質問させてもらったが・・」「御社のことは何十年前から見ているが・・」等々、いつの間にか質問者本人の演説になってしまっている

【株主からの質問に対する企業側の回答あるある】
● 割と具体的な質問が来ているのに、抽象的な内容で返答する。結局、何が言いたいのかがよく分からない
● 上と同じようなことであるが、質問されているテーマと少しズレたテーマで回答する
● 「○○取締役への質問です」「△△監査役への質問です」と指名されているのに、それとは違う人が回答する

どうでしょうか。このあたり、株主総会では必ず目にする光景かと思います。これらも踏まえ、私は株主総会の質疑を見る際に2つのポイントに注目しています。

1つ目は、「質問者の質問に対して、企業側がどの程度ストレートな回答をするのか」です。上の「あるある」にも記載しましたが、企業側は抽象的な回答をすることが多いです。これはバスケット方式と呼ばれ、企業側はあらかじめ「決算に関する質問」「今後の投資に関する質問」「コンプライアンスに関する質問」「女性管理職登用に関する質問」「市況の見立てに関する質問」など、質問をグループ分けしています。その上で、どんな質問が来ても、自分が用意しているグループ毎の回答の中で無理矢理答えようとします(そういうことが多いです)。政治家の記者への回答と全く同じですね。だからこそ抽象的ではなく、ストレートな回答が見られたときは、私の中で結構ポイントが高かったりします。

2つ目は、「経営幹部たちのスタンスの一貫性」です。会社によっては株主総会で社長しか話をしないこともあるかと思いますが、株主からの質問内容に応じて様々な幹部が回答をしていくこともあります。その際に、「幹部によって持っているビジョンが多少異なるな」と思うこともあれば、「どの幹部も同じビジョンでもってして臨んでいるな」と思うこともあります。当然ながら、後者の方が「経営体制が盤石である」という印象を我々に与えます。

3.なぜソフトバンクとトヨタの株主総会は楽しいのか

株主総会もオンライン化が進み、それがコロナによって更に後押しされています。株主総会の在り方が変化していることには一長一短ある訳ですが、なかなか従来のような企業側と株主間での白熱した議論が見られなくなってきているのも事実です。そうすると株主総会自体が「単なる事業報告会」のようになっていき、参加者目線では結構退屈なものになってきます。開催形式が変わっていくことは致し方ないと思う一方、退屈な内容になっていくのは残念なことです。

そんな中、とても注目を集めている株主総会が2つあります。ソフトバンクとトヨタです。この両社の株主総会は毎年必ずニュースで取り上げられます。そしてそんなニュースを見ながら、両社の業績が良いときも、悪いときも、我々は色々なことを考えさせられるのです。

【ソフトバンクの株主総会】
https://group.softbank/news/webcast

【トヨタの株主総会】
https://global.toyota/jp/newsroom/t-road/

なぜこの2社の株主総会は退屈しないのでしょうか。答えは明白だと思うのですが、ソフトバンクであれば孫正義氏、トヨタであれば豊田章男氏、それぞれが「本当に自分が信じている夢について語るから」です。ここで重要なのは「しっかり語ること」と「本当に信じていること」です。しっかりと語らなければもちろん想いは伝わらないですが、本当に信じていることでなければ株主にも見透かされてしまいます。

おそらくソフトバンクとトヨタの株主総会に参加している人たちは、毎年、孫正義氏と豊田章男氏の『夢の続き』が知りたいのだと思います。これは株主総会を「単なる事業報告会」のように扱っている会社とは大きな違いになります。ソフトバンクとトヨタの場合、企業規模の大きさから社会的責任を伴う部分も大きく、否が応でも注目されてしまう側面はあります。ただ孫正義氏と豊田章男氏の「周りに自分の夢を見せていく」というリーダーとしての在り方は、企業規模の大小に関わらず我々にとって参考になるものであります。

今年も、自分と関係のある会社、そして自分と関係のない会社も(笑)、株主総会を色々とオンラインでチェックしたいと思います。開催する立場である企業側のみなさんは、事前の準備を含め本当に大変だと思います。ただ、社会に対して自分たちの『夢を語る』絶好の機会でもありますので、是非頑張っていただけたらと陰ながら応援しています。

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