【CEOブログ】(#Withコロナ)「脱ハンコ時代」における3つの常識とは #024

今日は、最近話題の「ハンコ文化」問題を考えていきたいと思います。

1. 「ハンコ文化」問題のおさらい

今さらではありますが、問題自体を軽くおさらいします。(2020年5月時点での状況です)

・新型コロナウイルスの広がりを受け、日本でも緊急事態宣言が発出され、外出自粛が要請されている

・それでも、工事現場、建設現場、製造工場、農家、スーパーマーケットやコンビニなどの生活必需品を販売する店、市役所、等々、どうしても人々の出勤が求められる場所がある。一方で、多くのオフィスワーカーに於いては会社に出勤するのではなく、リモートワークで自宅から働くのが新しい「常識」となっている

・現場仕事ではないのにも関わらず、リモートワークを実践していない企業は未だに存在する。その理由は様々であるが、要因のひとつに「書類に押印が求められていて、社印が会社に置いてあるので出勤が必要」がある

・「ハンコ文化は日本的であり、時代錯誤である」との論調が強まることになり、企業は「ハンコ文化をなくすように」と社会的圧力を受けている

尚、この際に、しっかりと留意すべき事項が2つあると考えます。

ひとつは、これは「自社だけの問題」ではない点です。社内許可のために「押印」が求められているのであれば、これをなくすのは非常に簡単なことです。社内ルールを変更すれば良いだけです。しかし契約書への「捺印」は、契約相手もいることなので、自社の都合のみで決めるのが「難しい場合」もあります(「不可能」と言っている訳ではありません)。

もうひとつ留意すべきは、ハンコ文化問題によって「新たな課題」は何も出現していない点です。では詳しく見ていきましょう。

2. 「ハンコ」を押すと何が起きるのか

「ハンコ」を押すとき、そこには100%の確率で「紙」が存在しています。そして「紙」が存在しているとき、限りなく100%に近い確率で「印刷」のプロセスが存在しています。「手書きの書類」に押印または捺印する場合は別ですが。

また「紙」が存在していると、それを展開するに際して、一定の割合で「郵送」のプロセスが存在しています。もちろん「紙」に押印または捺印したものをスキャンして、PDFなどのファイル形式で展開する場合もあるので、必ず「郵送」が発生する訳ではありません。

ちなみに書類を「郵送」するとなると、その書類には「郵送先」が存在することになりますし、「郵送先」には(書類が自宅などに自動転送される場合を除き)、実際に「書類を受け取る人」に居てもらう必要があります。「郵送」された書類を、受け取り、開封し、中身を確認し、内容に応じて保管・対応・廃棄などアクションを起こす必要があります。書類を「物理的に受け取る人」は、会社宛に送られてくる郵便物を自宅からでは確認することできませんので、「出社」しなければなりません。

また書類を「紙」にアウトプットして押印または捺印しているのであれば、「紙の状態のまま保管」していることも考えられます。PDFでファイル保管して、紙は廃棄している場合ももちろんあると思います。仮に「紙の状態のまま保管」しているとすると、それを保管するための「キャビネ」が存在していることになります。その「キャビネ」の中を確認したい場合は、やはり「出社」しなければなりません。

コロナ禍でリモートーワークを語るに際して、「ハンコ」に焦点が当たることが多いです。ただ我々を取り巻くビジネス環境下で見ていかないといけない物事の中では、「ハンコ」は小さな小さなひとつのパーツに過ぎないことが分かります。「ハンコ」を求めると、それに伴って「紙」「印刷」「郵送」「出社」「キャビネ」といったものも必然的に求めなければなりません。

3. 「新たな課題」に直面している訳ではない

ご存知の方も多いかと思いますが、経済産業省はDX(デジタル・トランスフォーメーション)を積極的に打ち出しています。あまり馴染みのない方は、以下のサイトより概要を確認できます。

https://www.meti.go.jp/policy/digital_transformation/

「紙」が存在していることに端を発して多くの状況(印刷、郵送、キャビネ保管、出社、etc.)が生み出されていることは、上に細かく記載した通りでありますが、ペーパーレスはそもそも世の中全体が向かっている先にあるものなのです。

新型コロナウイルスの影響が広がる中で、リモートワークへの移行に苦戦している企業もあるかもしれません。ただしこれは、これまでに存在していなかった「新たな課題」が突如として出現した訳ではありません。世の中全体が元々向いていた方向があり、新型コロナウイルスを取り巻く状況によってその「動きが加速された」に過ぎないのです。

従って、元々DXを進めていた企業はリモートワークへの移行に苦戦はしていません。そうではない企業は、時代の方がどんどん先に進んでいってしまっているので、勇気を持って変化と向き合うべきタイミングにあるのではないでしょうか。

4. 対処すべきは「ハンコ」ではない

ここで少しだけ、私の考えを紹介させてください。私は大企業とベンチャー企業、この両方に勤めた経験がありますが、ベンチャー企業の方がはるかに「社員1人あたりのコピー機設置台数」が少ないです。ペーパーレスが当然の前提として置かれているからであります。

古い体質の企業は、コピー機の数の多さで分かります。さすがに「オフィス内のコピー機台数をゼロにせよ」とまでは言いませんが、私の感覚では「コピー機は社員150人に対して1台あれば十分」です。オフィスにいる社員の数を150で割ってみてください(小数点以下は切り上げ)。その数よりも、オフィスに置いてあるコピー機の台数の方が多ければ、それは明らかに多いですね。

時代はペーパーレスに向けて動いています。その中で「ハンコ」は問題の本質を捉えておらず、私は「ハンコ」をなくす努力をする前に、オフィスからコピー機を撤去することから始めるべきと思います。それを通じて「紙」から人々の意識が離れれば、巡り巡って、ハンコはもちろんのこと、最終的には「そもそもオフィスに出社する必要あるのか?」というところまで考えは及んでいくのだと思います。

5. 「常識」としての3つの配慮

リモートワークの促進は、ビジネス現場から「対面での活動」を減らしていくことになるのは想像に難くないかと思います。これに、2010年代から謳われ続けている働き方としての「脱電話」も加えて考えてあげると、我々はビジネスマナーの観点から、顧客に対して次の3つのことを配慮していくことになると思っています。

1) 電話させない
電話自体をなくす必要はないのですが、「電話以外に問い合わせ手段がない」ような状況を相手に対して作ってはいけないように思います。

2) 郵送させない
「商品」の郵送はもちろん必要です。ただ「書類」の郵送は本質的には不必要なはずです。相手が書類を郵送しなければならないような状況を我々は決して作ってはいけないように思います。

3) 対面させない
これはコロナ禍ですっかり定着してきた考えと思います。社員に出社させるのもそうですが、客先訪問も含め、「対面」を求めることは、時代の流れに逆行しています。これは飽く迄もビジネス上の話です。子供が学校で同級生と「対面」するのは、これは全く別の話になってきます。

尚、ビジネスに於ける「対面しない」時代の新常識については、以下の記事も大変参考になります。

https://www.wantedly.com/companies/gzeal/post_articles/231430