【CEOブログ】ミャンマークーデターから4カ月

1.クーデターから4カ月

今年の2月1日にミャンマーで国軍によるクーデターが発生してから4カ月が経過しようとしている。その間に、国軍は政治を掌握し、市民は「CDM(Civil Disobedience Movement)」と呼ばれる「​市民不服従運動」を展開し、武力行使による犠牲者数は800を超えるとも言われており、アメリカなど一部の国はミャンマー国軍に対して経済制裁を科し、逆にロシアはミャンマー国軍への支援を強化し、ASEAN諸国はミャンマーとの対話を通じた解決に向けて動いている。

アウン・サン・スーチー国家顧問をはじめとする、これまで政権(=NLD:国民民主連盟)の中心メンバーたちは、クーデターの当初から国軍により拘束されている。同氏は自宅軟禁されていると見られるが、「無線機の違法輸入」など必ずしも本質的とは思われないような罪状を複数科せられており、国軍側は審問を続けることで拘束を長期化させている。これによって来年NLD抜きの総選挙を実施する狙いがある、或いは国軍が国家をコントロールする現状を既成事実化し、この状態を維持していきたいのではないかとする見方もある。

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ミャンマーに居住する日本人に関しては、日本に帰国することを日本政府が奨励しており、企業駐在員の多くは帰国をしている。自営業者など、一部の日本人は依然としてミャンマーに残っている。

2.動き出した経済と障壁

クーデターが起き各地で抗議デモも激しさを増している当初(2月、3月)は、ミャンマーの多くの経済機能が停止していた。その後、国軍による市民への銃撃が続いたことでデモは沈静化する一方で、経済自体は徐々にその動きを取り戻している。スーパーマーケットは営業していても建設現場の工事は止まったまま、学校は再開していないなど、業種により状況のばらつきはある。

またクーデター発生直後には人々がATMに殺到し、「現金」が入手できなくなる事態に見舞われた。CDMの動きの中で、銀行機能は停止し、海外からの送金(一部)もできなくなってしまった。「経済の血液」と言われる現金が流れなくなることは(キャッシュレスは相対的に普及していない)、再開し始めたミャンマー経済に困難をもたらす要因のひとつとなっている。「食べ物は入手できインターネットも利用できるが、仕事はなくなり現金も手元にない」という声は、私の現地の知人からも耳にする。「オンライン英会話の講師」を開始するなど目先の収入確保に動く人がいる一方で、国外に出て生活を安定化させられないかと考え始める人も増えている。

3.新型コロナウイルスの広がり

加えて、忘れてはならないのは新型コロナウイルスの感染拡大である。元々一日当たりの感染者数が二桁に達していなかったミャンマーは、昨年の夏過ぎから一気に感染者数が増え、一日当たりの感染者数が1,700人を超えたこともあった。しかし今年2月のクーデター以降は、検査体制が整わず、3月には記録上の一日当たり感染者数が「0」となる日もあった。その後徐々に検査体制は回復し、直近(5月後半)では一日当たり感染者数が100人近くまで増えてきているが、これが現在のミャンマーの状況をどこまで正確に表している数字であるのかは不明である。

今年2月にはミャンマー最大都市ヤンゴンでは数万人規模の抗議デモが繰り広げられ、以降も全国各地で市民はデモに参加し密集していた。数字で把握できている以上にミャンマー国内で新型コロナウイルスの感染が拡大していることは想像に難くない。

4.静観は続く

クーデターから4カ月が経過し、その中でも市民は生活を続けなければならい。一方で政治的な決着への道筋は見えていない。これまで「政治的な決着には時間がかかる、従って経済が元に戻るのには時間を要する」と私は考えていた。ところが「政治面では進展が一切見られない、経済は動けるところからそれぞれ動き出している」が今の実態である。Goziokiの取り組む事業の観点では、もうしばらく「静観」を続ける一方で、これまでの経緯も踏まえ、ミャンマーとはビジネス上の関係は持ち続けていくべきと考える。上記に述べた「国外で働きたいと考えるミャンマー人の増加」など、現場の状況に対しいつでもビビッドな反応を示せるよう、アンテナは張り続けていきたい。

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