【CEOブログ】2025年、世界は大きな分岐点に立つ。
(今回の記事は、2025年3月2日に執筆)
1.アメリカとヨーロッパの分断
色々なことが起き、社会環境が変化していくことは、この世の常である。昨年の終わりぐらいからを見てみても、本当に多くの「衝撃的なこと」が続いている。
・2024年12月3日 韓国・ユン大統領における「戒厳令」の宣言
・2024年12月8日 シリア・アサド政権の崩壊
・2025年1月6日 カナダ・トルドー首相の辞任表明
・2025年1月27日 DeepSeekショック(NVIDAの時価総額が6,000億ドル下落)
また2025年という年は、Eurasia GroupのTop Risksでもしつこく述べられている通り、ドナルド・トランプ氏個人による影響を大きく受ける一年になることが最初からある程度見えている。直近の事例で言うなら、「トランスジェンダーによる女性スポーツへの参加禁止」や「500万ドルでのトランプ・ゴールドカード(米永住権)販売」などは、我々もニュースを見て知るところである。
そして、「衝撃的なこと」は更に続く。
・2025年2月14日 ミュンヘンの安全保障会議で米ヴァンス副大統領がヨーロッパを批判
・2025年2月17日 仏マクロン大統領の呼びかけで、欧州各国が参加しウクライナについて議論する緊急会議をパリで開催(アメリカは含まれず)
・2025年2月18日 リヤドで米露協議開催、アメリカからはルビオ国務長官が出席(ウクライナ含むヨーロッパは含まれず)
ここ最近ではなかったような水準での、「アメリカとヨーロッパの間の明確な分断」である。NATOの在り方、ヨーロッパ全体の安全保障にも影響を与え得る事態となっている。
2025年、世界は大きな分岐点に立っている。
トランプ大統領はそこに更に追い打ちをかけていく。
・2025年2月28日 米大統領執務室(Oval Office)におけるトランプ・ヴァンス・ゼレンスキーの会談が、強めの口論に発展
・2025年2月28日 欧州各国首脳がX(旧Twitter)でゼレンスキー大統領を擁護する内容を投稿
2.結果とプロセス
アメリカにしても、ヨーロッパにしても、望んでいるものは平和であり、そこの認識は共通である。ロシアとウクライナの間の戦争は終わらせる必要がある。
アメリカは停戦乃至終戦という「結果」の実現を急いでいて、このためには多少「プロセス」において寛容さを見せなければならないと考えている。ロシアに対して譲歩する部分も出てくるであろうし、また交渉を通じて物事を前に進めていきたい中にあって、相手(ロシア)に対する必要以上の批判は意味をなさない、このような発想である。
一方でヨーロッパやウクライナは、「侵略」というロシアの行いに対してしっかりと向き合い、手を打っていきたい考えである。2月28日のOval Officeでの会談でゼレンスキー大統領も強調していたのは、ロシアによる侵略は(2022年2月に発生したのではなく)2014年のクリミア併合から続いている点。ロシアの姿勢を根本的に改めていかないと、同じようなことが繰り返されると懸念している。ウクライナにとって、様々な条件をしっかりとロシアと合意していく、終戦に向けた交渉の「プロセス」は重要である。停戦乃至終戦という「結果」に辿り着きたい気持ちは誰よりも強いが、そこだけを急いでも本当の意味での平和には繋がらないと考えるからである。
アメリカからすると、「ウクライナはいたずらに戦争を長期化させている」と見える。一方でウクライナやヨーロッパ諸国からすると、「アメリカがここでロシアに寛容さを見せれば、将来ロシアはまた侵略を繰り返すであろう」と捉えている。
3.歴史が証明
未来のことは誰にも分からないが、個人的には、この先アメリカとヨーロッパの距離が縮まっていくイメージはあまり持てていない。両者の間の溝は今後も深まっていくばかりなのではないだろうか。
そしてロシアとウクライナの間の戦争は、アメリカの実利的なアプローチにより、ある程度早いタイミングで停戦を実現できると予想している。ウクライナを含むヨーロッパ諸国の「プロセス重視」な考えも理解できるが、ロシアを批判していくスタンスでは、そもそもロシア側と交渉のテーブルに着くことも難しい。そうすると、最終的にはアメリカが考えるシナリオに実態は近付いていくのではないだろうか。
ロシアとウクライナの戦争をきっかけに、アメリカ的合理主義とヨーロッパ的社会民主主義の違いが改めて浮き彫りになっている。どちらの考え方が「正解」ということはもちろんないが、どちらの考え方が「時代に適応するのか」は、いずれ歴史が証明していくことになる。