【CEOブログ】『インド戦略』はありますか?

1.輝けるインド

BRICSという言葉が使われ始めたのは2001年頃であるが、その時点で「I」、即ちインドは注目すべき国の仲間入りを果たしていた。また私が社会人になった2005年当時から「インドは輝くのか?」と、インドの経済的飛躍には期待が寄せられていた。

ただ「今年こそは!」と毎年言われているのに対して、実態は追い付かず、次第に「いつになったらインドはブレイクするのか?」と疑問を呈する声の方が大きくなっていった。そしてインドは、2000年代に大躍進を遂げた中国に明確に遅れを取る形となった。

それでも、2014年にモディ政権が誕生して以降のインドは、状況が変わってきている。

• 人口が中国を抜いて世界1位
• GDPはイギリスを抜いて世界5位。あと数年で日本とドイツを抜いて世界3位になることは確実
• Amazon最大のオフィスはアメリカではなくハイデラバードにある
• Goldman Sachsは、全グローバル従業員の1/5が在インド
• “GAFAM”の内2社は、CEOがインド出身(Alphabet/GoogleのPichai CEOと、MicrosoftのNadella CEO)

また私自身がインドに足を運ぶ中で、強く感じるのは、「インドのビジネスエリートたちがインドで活躍することを望んでいる」点である。これまでインドの優秀層は、アメリカの大学で学び、そのまま海外で活躍するのが一般的であった。ところが近年、アメリカの大学で学んだ人たちが、(場合によっては海外で数年間働いた後に)インドに戻ってきている。「インド出戻り組(?)」に話を聞いてみると、「勢い良く成長を重ねるこの市場(=インド)を体感しない手はない」と皆が口を揃えて言う。

モディ首相率いるインド人民党(BJP)は、2024年の選挙で単独過半数は逃したものの、選挙で勝利し、政権三期目に突入した(任期は2029年5月まで)。「Global Southのリーダー的存在」「全方位外交(八方美人外交?)」などと表現されるモディ政権には、過去10年間そうであったように、今後もしばらくはインドを力強く牽引することを期待したい。

2.日本企業の立ち位置

この伸びゆく市場を目の前にして、日本企業はどうすれば良いのか。①既にインド進出を果たしている企業、②インドに進出したものの上手くいかずに撤退した企業、③インド市場に関心はあるがハードルの高さを感じている企業、④最初からインドを自社の成長戦略の構想外と位置付けている企業など、対応は各社とも様々。

「インドに進出すべきか否か」で言うと、業種や取扱製品によって状況が異なるため、市場のポテンシャルが高く見えても、一概に「インド進出が正解」とは言えない。ただ一方で、グローバルな事業であればマクロ環境の中で多かれ少なかれ、何かしらインドの影響は受ける訳で(間接的な影響かもしれないが)、インド市場を観察することは必須となる。

また、分かりやすいベンチマークになるのが、同業他社の動きである。同業他社が既にインド市場でアクティブなのであれば、おそらくそこに事業機会はあるのであろう。

尚、「リバース・イノベーション」という言葉の生みの親として知られるダートマス大学タック経営大学院のGovindarajan教授は、「今の時代、グローバル企業たるもの必ず『インド戦略』を持たなければならない」と以下のペーパー(リンク先参照)で述べている。企業戦略を考える上では参考になる考えである。

https://hbr.org/2023/06/does-your-company-have-an-india-strategy

<結論>
• インド市場を攻めることが必ずしも正解とは限らない
• 但しグローバルビジネスに携わる以上、インド市場をwatch することは必須
• 競合他社がどうインド市場に対して仕掛けているのかは重要なベンチマーク

3.インド市場に対する具体的なアプローチ方法

時代の変化が速い今、事業を進める際のアプローチは、「最低限の事業戦略を練り、その上で如何に実務に関わるPDCAを高速で回していけるか」に掛かっているような気がする。インドについても同様である。

<一例>
• 製造業であれば(最終的には)現地生産する
• サービス提供会社であれば、地場企業に対するコンサルティングを実施する
• 自社のグローバルでの受け皿拡大を図るのであれば、インドで優秀な人材を多く抱える

4.まとめ『インドを見ずしてグローバルは語れない』

Goziokiでは、これまで東南アジアでの事業が中心であった。但し2023年頃から、グローバルでの時流を踏まえ、インドへの注力を深めている。先に述べた通り、全ての企業にとって「インド進出」が正解とは限らないものの、全てのグローバル企業にとってインドは注視すべき対象であると感じている。

この先少なくとも10年間は『インドを見ずしてグローバルは語れない』状況は続くと考えられる中で、「インドの動向」は「第二次トランプ政権」や「AI開発戦争」などと同じくらい、我々が頭の中に留めておく必要のあるテーマである。