【CEOブログ】もうひとつの選挙 〜ミャンマーと事業環境〜
1. グローバルビジネスとマクロトレンド
これまで15年以上グローバルなビジネス環境に身を置く中で、私が学んだことがあるとすれば、それは「カントリーリスクを考えながら世界のマクロトレンドを追いかける」ことの重要性である。経済があり、政治があり、常に両者が相互に影響を与え合っている。金融政策があり、財政政策があり、その中で金利が動き、為替が動く。大学時代には興味を示すことができなかった「マクロ経済学」であるが、ビジネス現場でその仕組みを身をもって体感するうちに、自然とドル/円為替レートやWTI(原油)価格を気にするようになっていた。
グローバルビジネスのトレンドの中にあって、最近で言えば、2020年11月の米国大統領選挙は大きな注目を集めることとなった(この記事を執筆している11月12日時点で、バイデン氏が当選確実となっている)。2020年は新型コロナウイルスによって世界中の経済が影響を受けることになった一年であるが、来年以降の経済立て直しをバイデン氏はどのように舵取りしていくのか、ドル安基調はどこまで続くのか、対中強硬策の次なる展開は。
2. 重要な選挙
2020年11月、もうひとつ(弊社が関わるビジネスにとっては)重要な選挙が行われた。5年ぶりとなるミャンマー総選挙である。この選挙は、ミャンマーでビジネスに取り組む多くの人が意識し続けたことと思う。ここ数年、アウン=サン=スーチーの人気が徐々に下がっていることが感覚的に感じられる中で、私自身も様々な選挙結果や、それに伴って起こり得ることを想像しながら、2020年11月を待ち続けた。
「仮にミャンマーが軍事政権に戻るようなことがあればビジネス環境が大きく変わってしまう」
「いくら国内で民族問題が騒がれているとはいえ、国民は再び軍事政権に戻ることを望むだろうか」
その間にも世界中で新型コロナウイルスの感染は拡大し、当初感染者数がそこまで増えていなかったミャンマーに於いても8月後半から状況が一変、現在はロックダウンに近い状態となっている。
3. 予想外の結果とは
民政移管後初となる2015年に行われた総選挙は、アウン=サン=スーチー氏が党首を務める国民民主連盟(NLD)の圧勝に終わった。今回もNLDの勝利が確実視されていたものの、近年のアウン=サン=スーチー氏の実績は乏しく、どこまでNLDが票を伸ばせるか、もっと言うと「NLD単独で議席の過半数を取得できるのか」に注目が集まっていた。
フタを開けてみると、「2015年を上回る議席数(過半数)でNLDが圧勝」とのニュースが流れてきている(11月12日現在、選挙結果の正式発表はなされていない)。NLDは勝利宣言をし、対立する連邦団結発展党(USDP)は選挙の不正を主張している。想定外にNLDが票を伸ばすことができた背景には、コロナ禍で現政権が継続的に行なった現金給付が奏功しているとの見方がある。ミャンマー国内の新型コロナウイルス感染拡大は一向に落ち着かないが、今回の選挙結果によって、この先5年間は過去5年間と同様の環境下でビジネスを推進できることはポジティブな動きとして私は捉えている。
最後に、ミャンマーの選挙結果に対する米国ポンペオ国務長官のコメントを紹介したい(以下リンク参照)。民主化への移行にあって、総選挙は重要な位置付けにあるとしながらも、軍人議席(憲法の規定で1/4の議席が軍に割り当てられている)やロヒンギャ問題に対する懸念に就いても述べている。
【2020年ミャンマー総選挙に関わるポンペオ国務長官コメント】
https://mm.usembassy.gov/statement-by-secretary-michael-r-pompeo-burmas-parliamentary-elections/