【CEOブログ】アジア人材市場に訪れる3つの波 #010

グローバル化が進む中でアジア域内でも国境の概念が薄れつつあり、自分の出身国とは異なる地で職を見つける人々が増えてきている。これは、ホワイトカラー/ブルーカラー両方の層で見て取れる動きである。そして労働人口が減少している日本は、アジア人材市場の中での立ち位置を明確にしていかないと、すぐに人材獲得競争に置いていかれてしまう。では今アジア人材市場では何が起きているのか?短期、中期、長期でそれぞれに訪れる3つの波に目を向けていきたい。

第1の波(短期):「国境」の概念の希薄化

現在既に起きているのは、冒頭にも書いた通り「アジア人材市場に於ける国境の概念の希薄化」である。

ホワイトカラー労働者は、より高度な教育を受けていたり経験を積んでいたりすると、グローバル人材市場で自らが好む仕事を積極的に選んでいける立場になる。またインターネット、SNSの普及を通じて情報の非対称性は解消されており、雇用側は優秀な人材を国関係なくグローバルにヘッドハンティングしている。

ブルーカラーに関しても人の動きは同じである。より良い条件を求めて他の国で働く流れは加速している。労働者にとって「高い賃金」は重要な要素ではあるが、受け入れ国の立場では、賃金だけに限らず、文化・環境の観点からも働きやすい場所であると労働者に対して見せられるか否かがアピールの差となっていく。

第2の波(中期):「適材適所」の徹底

一般的に情報の非対称性が解消されると、その次に起きるのは情報分析の精度を高め、情報を更に有効な方法で活用しようとする動きである。

アジアで第1の波を経て、人々が国関係なく仕事を選べる土壌が整うと、そこからは如何に更なる「適材適所」を推し進められるのかが、人材獲得競争を勝ち抜くポイントとなる。個々人の能力・特性・選好に完全に合致した仕事の選定または提供は、働き手/雇用側双方にとって利点となるのは言うまでもない。

そして「適材適所」を徹底するためには、企業にマッチングされる人材を「予め評価する基準」をどのように持てるのかが鍵となろう。人材を事前に評価する手法として、能力診断、性格診断、語学力判定に関わるツール等々は既にこの世に無数に存在している。それらを統合的に活用し、且つ人材が国境を越えていく点を意識し、異なる文化・環境への親和性や適応力を見てあげる。それらを基に雇用側のニーズに応えられれば、強力なマッチングとなる。

第3の波(長期):「高度人材」の更なる価値向上

「適材適所」が徹底されると、一見すると理想の世界の完成である。ではそこから先、世界はどこへ向かうのか?

相対的に単純な仕事と、相対的に高度な仕事があるとすると、相対的に単純な仕事から順番に自動化されたりAI(人工知能)へ置き換えられたりし、人間の手から離れていく。つまり「相対的に単純な仕事」自体がなくなっていくのである。

そして「人材市場」で起きるのは、高度人材に対する需要の集中である。また斯かる状況下では「高度な教育」を提供できる事業者もしくは教育機関が重要になってくる。ここで「高度な教育」とは、教育内容を充実させ市場全体の教育水準の底上げに寄与するというような単純な話ではない。先の適材適所/強力なマッチングにも繋がるが、雇用主たる企業各社がそれぞれに求める特有の人材ニーズに合致したソリューションを如何に提供できるかである。

現在教育に携わっている事業者からすると、今後来たる第3の波を見据えた動きは、既存事業を昇華させるに留まらず、グローバル人材市場で存在感を発揮できるまたとないチャンスである。「教育」の切り口は、日本がアジア人材市場に於ける立ち位置を考えていく上でのヒントにもなるかもしれない。