【CEOブログ】冷静にインドについて考えてみる 〜インドを見ずしてグローバルは語れない〜 #048

昨年から「インドの重要性」を継続的に訴えてきているが、このことの本質をある程度冷静に解説していきたいと思い、今回この文章を記すものである。読んでくださっている方の客観的な理解の一助になればと願うと同時に、私自身も全ての情報をフェアに取り込めている訳ではないので、私の方で何か間違った認識があれば是非教えていただきたい。

1.なぜ今インドが重要なのか?

現在のインドの重要性を語る方法は色々あると思うが、私自身がよく使う例は次の通りである。

• インドは世界一の人口を誇る。地球上を歩いている人の6人に1人はインド人。それだけ消費市場において存在感があることを意味している

• インドのGDPは世界第五位。また2027年頃までにドイツと日本を抜いて、世界第三位になる見通しがある。インドはこれから日本をも上回る経済大国になっていくのである

• 『米中貿易戦争』が語られるようになって久しい。米中間には二項対立の構造がある。だからこそ、全方位外交(八方美人外交?)とも言われるインドがどのような立ち位置を取るのかは注目に値する

• 『グローバルサウスの台頭』は、グローバル経済の動向を左右するもっとも重要な動きの一つである。そして自他共に認める、グローバルサウスの精神的支柱とも言うべきリーダーの立場にあるのがインド。これからインドはどのようにグローバルサウスを引っ張っていくのか

これだけを見ても、世界の経済・政治を考える上でインドがいかに無視できない存在であるかが分かる。

2.GCC

マクロ環境を語った後は、少し現場の様子を見ていきたい。

グローバル大手と言われる企業は現在、業種に関わらず、グローバルでのコーポレート機能を集約したGCC(グローバル・ケイパビリティ・センター)を設けている。GCCを起点にイノベーションを起こしていくのがトレンドになっている。GCCは世界に4,000ほどあるが、その内の半数近くがインドに位置している。インドがGCC拠点として選ばれる主な理由は、コスト効率の高さ、高い技術力(豊富なエンジニア)、言語(英語でビジネスが可能)にある。

ちなみにGAFAMと呼ばれるGoogle(Alphabet)、Apple、 Facebook(Meta)、Amazon、Microsoftは、いずれもインドのハイデラバードにGCCを設けている。このうちAmazonのハイデラバード拠点は、グローバルベースで同社最大のオフィスとなっている。Microsoftのハイデラバード拠点は、アメリカ国外で同社最大のオフィス。尚、インド市場のポテンシャルの話からは逸れるが、GoogleとMicrosoftはCEOがインド人であることは、皆の知るところである。

金融業界も見ていきたい。Goldman SachsとJPMorganは、いずれもインドのバンガロールにGCCを構えている。Goldman Sachsは、全世界の従業員の1/5がインドに在籍している。

「インドのシリコンバレー」と言えばバンガロールであるが、2010年代以降、急速にIT産業を発展させてきたのはハイデラバード。ただバンガロールも近年、金融テクノロジーハブとしての地位を確立している。

3.モディ政権

ちょうど最近、5年に一度の総選挙の結果が出揃った。2014年、2019年に続き、今年もインド人民党(BJP)が勝利し、モディ政権は三期目に突入する。ただ過去2回と異なり、今回の選挙でインド人民党は単独では議席の過半数を割り込んでしまった。このため連立政権の樹立となり、またこの連立政権も憲法改正に必要な2/3議席は満たしていない。モディ首相にしてみたら、三期目から意思決定のプロセスが変わってしまったことになる。自分で全てを決められるのではなく、各党と歩調を合わせることで政策を前に進めていく。

モディ政権は、その独裁的な側面や、ヒンドゥー教至上主義的な政策がこれまでも国際社会から非難されてきた。今回の選挙結果を受け、そのあたりが弱まればプラス材料と捉えられる。一方で、これまで進めてきた政策の一貫性が損なわれる可能性があり、先ほど述べた意思決定プロセスの変化と併せ、混乱は避けられない。

4.「思い入れ」はない(?)

私個人の話をしたい。私はなぜインドについて熱く語っているのか?何か特別な思い入れがあるのか?

インドの熱量は肌で感じているし、そこに大きな希望を抱いているものの、変に感情的な意味での「思い入れ」はない。これまで長くインド事業に従事してきた訳でもなければ、特別にインド人の友人が多い訳でもない(仲の良いインド人の友人は数名いるが)。インドと向き合っているのは、市場としての魅力・影響力によるところが大きい。

だからこそ、私からすると、逆に「なぜインドと向き合わないのか?」と思ってしまう。インドに対して十分な情報を持ち合わせていないか、それとも「衛生環境が悪そう」といったネガティブなイメージに起因した偏見があるか、このどちらかと思われる。インドと向き合わないロジカルな理由は見当たらない。

まずは一度行ってみることを強くお勧めする。

5.「価値」としてはAIと同じ

「インド」と「AI」はもちろん2つの全く異なるものであるが、2024年6月現在、社会におけるその「価値」は同等である。少なくとも私はそう思っている。

例えば「AI」のトレンドを無視したいと思っているビジネスパーソンは皆無に等しい。またほとんどの人が「いかに自分のビジネスにAIを取り込むか」を考えている。つまり「AIと向き合わない」選択肢はないのである。

「インド」も同じで、そのトレンドは無視できず、「いかに自分のビジネスにインドを絡めていくか」がもっとも考えるべきテーマ。別に「明日からインド事業を始めましょう!」と言っている訳ではない(そんな簡単にできるものでもない)。「少なくともインドをウォッチする必要があるのでは?」と述べているものである。

6.日本のVCの反応

このように、別に何か特別な思いがある訳ではなく、ビジネス的な合理性の観点で「インド」を推している。ただ現実的には、インドに対する関心を得られずに、自分のやりたいことが思うように進められない場面もある。

昨年も、日本ではある程度名前の知られているVCで、インドに対して一切興味を持っていない先に2社ほど遭遇した(一方で「インドに注力している」先には多数遭遇した)。私からすると「インドに興味ない」というのは、「AIに興味ない」と述べることと同義なので、グローバルで活動するVCからこのような言葉が出てきたことに大きな衝撃を受けた。

もしかしたらこのVC(2社)の方の考えが正しいのかもしれない。今の時点では「グローバルで活動しているとされるキャピタリスト(日本人)の中にも、2023年冬の時点で、インドの魅力を肯定しない見方があった」とだけ、私の記憶に刻まれている。5年もすれば、どちらの見方が正しかったのかは判明するであろう。またその時に、今書いているこの文章を読みに戻ってきたい。

7.”India is my Last Game.”

私は15-6年前に「いま中国が世界の中心にいる」という感覚を持った瞬間があった。そしてそれからしばらくは中国事業にコミットを続けた。2023年9月、『G20ニューデリー首脳宣言』の発表を見た際、「いまインドが世界の中心にいる」と感じた。これから少なくとも10年間はその状態は続くと思われるが、その状態がもっと長く続くと予測する人もいる。

そんな中、最近私は”India is my Last Game.”と敢えて言うようにしている。本当にLastになるかどうかはともかくとして、自分のビジネスキャリアを考えたとき、熱狂するべき最後のテーマとして「インド」は申し分ない。

以上のように1.〜3.で客観的な事実に触れつつ、4.〜7.では感じたところを記してみた。お読みいただき、インドに対する印象は何か変わったであろうか。私はちょうどハイデラバード出張を計画している最中であるが、出張に行くタイミングで今回の「続編」をまた投稿できればと思う。乞うご期待。

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